当時横浜の小さな街に住んでいたわたしは、駅前の本屋さんへの道を歩いていました。
車通りの激しい道を横切ったときのこと。
歩道で、通りかかる人たちにしっぽを振っている、人なつこい子犬を見かけました。
ちょっと狼みたいな風貌で、思わず心惹かれました。
本を買ってふたたびその道を通ると、先ほどの子犬が、歩道に倒れてぐったりしています。
目もうつろで、荒い息をしていました。暑かったからでしょうか。
病院に連れて行きたいけれど、動物病院がどこにあるかわかありません。
途方に暮れていたら、ひとりの女性が声をかけてきました。
「その犬、この三日間、ずっとここにいるのよ。ここで捨てられたんだと思うの」
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