銀色狼〓輝くたてがみを持つ森の守護者
2019-07-15



禺画像]

薄い透けるような葉のあいだから、星明かりがこぼれる神秘的な森。
そんな夜の中を、銀色の狼が、ひとりの娘とともに歩いている姿が浮かんだのは
ずいぶん前のことです。
もともとは、まったく別の短編だったのですが、いつのまにか、わたしの中で、
ルシタナが、大きな狼をともなって、銀の森を歩いている姿と重なっていました。
そして、その姿も、はっきり見えるようになりました。

銀色狼……。そんな言葉が浮かびました。
けれども、どんないわれの狼かは、最初はよくわかりませんでした。
フィーンの旧世界が滅びるとき、フィーンと一緒にこの世界に渡ってきたのだと
ぼんやり感じましたが、なんといっても、強烈に伝わってきたのは、その姿。
フィーンと同じように、淡い光りを帯びたように輝いて、長い鬣が、月光のように
きらめきながら、風になびいています。

それから、一頭の銀色狼が、満月がのぼる雪の大地を、一心に駆ける姿が浮かびました。
また、眼下に森を見晴らす崖の上で、遠吠えをしている姿と、その声が聞こえました。
金色の瞳をのぞくと、そこには、銀河が渦を巻いて息づいていました。
サラファーンの星の、大切なエレメントだと感じました。

物語の中で、銀色狼は、フィーンの旧世界と、この世界の架け橋のような存在です。
前世で、フィーンに縁のある登場人物には、その遠吠えが聞こえたり、夢で姿を見たり
また、実際に、銀の森を訪れたときには、直接出逢ったりします。

公式サイトに「自然と暮らし」コーナーを作るにあたって、「生き物」のアイコンは
絶対に銀色狼にしようと決めていました。
デザイナーの畠山さんが、わたしのこのおおざっぱなスケッチを、いつものように
素敵なCGにしてくれました。
CGは額の白い星のないバージョンです。星があるのは、銀の森の一頭だけなのです。

犬好きで、犬の祖先だからか、狼にはとても心惹かれます。
旭山動物園を訪れたときも、森林狼に会えるのが一番楽しみでした。
リーヴが、銀色狼のふさふさしたたてがみのある大きな首を抱きしめるシーンは
描きながら、そのぬくもりや感触が伝わってくるようでした。

(『ユリディケ』を書いたときには、銀色狼の存在は知らなかったのですが、改稿の連載に
あたっては、絶対に外せないでしょう!と思って、冒頭から入れています。)
[キャラクター]
[石と星の夜]

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