今日は、『石と星の夜』の裏話を。
四部作はそれぞれ個性をもたせたかったのですが、
この第二巻は、中でも、少し変わり種かもしれません。
夏の終りから秋にかけて、ほんの二か月弱のあいだの物語で、
情報機関〈イリュリア〉内部の裏切り者を追う諜報員たちの話と、
サンザシ館の人々の話が交互に語られる構成になっています。
ロンドロンドが、リーヴェイン王室の諜報員になることで、
サンザシ館も、諜報の世界と間接的につながりを持つことになりますが、
ロンドロンドの表向きの仕事は通信員。
彼が極秘の任務についていることは、誰も気がついていません。
タイトル『石と星の夜』は、世界を滅ぼしかねない兵器が
生まれるきっかけとなった、星降る冬の夜をさしています。
ロンドロンドの同僚が、彼にそのことを話すセリフ
「すべてはある冬の夜ーー〈石と星の夜〉に始まった」
からきています。
(本の帯も、ここからほとんどそのままとってもらえて嬉しかったです。)
20代の後半、スパイものの小説をけっこう読んだ時期があって
中でも好きだったのが、ジョン・ル・カレの作品でした。
「寒い国から帰ってきたスパイ」を読んで、
その静謐で、冷徹で、悲哀に満ちたスパイたちの世界に、衝撃を受けました。
国や理念、組織のために、それぞれ、自分を犠牲にせざるをえない宿命や
それでも、愛するものを守ろうとする思い。その葛藤……。
読み終えて、何日も、心から離れませんでした。
ル・カレは、MI6(英国秘密情報部)の一員で、その経験をもとにスパイ小説を
たくさん書いています。
007もMI6という設定ですよね!(こちらの作者、イアン・フレミングは
英国海軍情報部に所属していました。)
何人かのスパイものを読んだ中で、ル・カレがダントツに好きでした。
どれもスパイの悲哀を描いて、深い余韻を残す物語。
(ル・カレの作品をすべて読んでいるわけではないし、
あまり偉そうなことは言えませんが。)
映画化されたル・カレ作品も多いです。
『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』は、主演のひとりが
BBCの『シャーロック』でシャーロックを演じたB・カンバーバッチでした。
邦題は『裏切りのサーカス』。
『ロシア・ハウス』と『ナイロビの蜂』も心に残っています。
『石と星の夜』は、ル・カレにオマージュを捧げる、という思いで、
せいいっぱいの敬意を込めて書きました。
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